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ポーランドの最新ビジネス環境 Part II: 応用編(2014年9月20日)

ここでは日系企業によるポーランドのビジネス環境の評価と日系企業によるM&A事例を中心に触れたい。

<日系企業によるポーランドのビジネス環境評価>
この前の基礎編に加えるべきであったが、ポーランドのコスト競争力となる月額賃金等についてお伝えする。

ポーランド

ポーランド人の個人所得も下記表が示す通り順調に伸びている。ポーランドは2007年12月にシェンゲンに加入。シェンゲン圏内の国境においては、旅券審査が行われることなく、人の自由移動が保障されている。人の自由移動は協定加盟国の国民だけでなく、他の全ての国の国民・国籍所持者に対しても保障されており、シェンゲン圏内の国境は誰でも自由に往来できる。

ポーランド 

順調な個人所得の伸びは、ここ最近の海外からの消費市場への参入企業の増大と相俟ってポーランド人の購買意欲を一層駆り立てている。以下、ここ最近の外資のポーランド市場参入の例である。ワルシャワやウッジ、クラクフなどの街を歩いていると、特に中心地にはファッション分野のH&M, ZARA, GAPなどなど、さらにショッピングモールに入ると米系ファーストフードがところ狭しと軒を並べる。

余談だが、先日、毎年3月にアナハイム(米国)で開催されているNatural Products Expo Westの担当者と意見交換をもつ機会があった。アメリカではアレルギー患者が増大の途にあり、例えばgluten-freeの商材が今や当たり前となっている。このアレルギー体質の人たちが増えているのはアメリカのみならず同じく同展示会が開催されている香港でも同じ傾向が見え始めているとの話しであった。その人の健康は、本来、You are what you eat.に由来するもので、口に運ぶものがその原因となる場合が多い。日本でもありとあらゆるアレルギーに悩む人たちが増えている。アメリカに代表される食パターン・食スタイルの影響を色濃く受けている日本でも以前から同様の現象が起きているが、それが他の国や地域にも「招かざる影響」を及ぼし始めている。ファーストフードに傾斜する食生活には要注意であるが、この流れはどうしようもなく塞き止めることは難しい。ポーランドも本来の豊かな食文化を残しつつも、一方ではもはや例外国ではないようだ。

- GAP(米) アパレル 2011年10月進出
- HEBE(ポルトガル) ドラッグストア 2011年5月進出。21都市25店舗に展開
- ビエドロンカ(ポルトガル) スーパーマーケット 2013年に268店舗出店
- IKEA(スウェーデン) 家具・インテリア 2011年11月店舗拡張。ロシア、中国に次ぐ売上高伸び率を記録(2011年)
- H&M (103店舗、2012年) ロシアを含む中・東欧市場でポーランドが最大の売上。2011年11月進出。
- トイザらス(米) 玩具 2011年11月進出
- ヴィクトリア・シークレット(米) 香水、美容用品.2012年7月進出。
- アメリカン・イーグル(米) アパレル 2012年8月進出
- ルイ・ヴイトン(仏) ファッション。 2012年8月現地法人設立。
- マセラティ(伊) 高級車 2013年ショールーム設立

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次に、在ポーランド日系企業がポーランド市場をどうみているか?についてだが、大きくは「消費市場としてのポーランド」と「生産拠点としてのポーランド」の二つに分けられる。前者は人口4000万人を擁する市場規模と潜在性である。後者は西欧市場への近接性、労働コスト、政治・経済の安定性である。在ポーランド日系企業で非製造業の約半数は「ポーランドが中・東欧市場の統括拠点」との認識で、特別経済区(SEZ)進出企業の75%は投資優遇措置が受けられることを進出理由に挙げている。

日系企業のポーランドのビジネス環境に対する評価は、大多数(94%)が「満足」、「やや満足」、「普通」で、「不満」「やや不満」との回答は僅かである。

<満足な点>
- 人材
- 政治・経済の安定性
- EU加盟に伴う経済発展
- 特別経済区の投資優遇措置
- 治安の良さ
- 親日的

<不満な点>
- インフラ(特に道路インフラ)
- 行政手続き(煩雑、ルールが不明確)
- 税制(複雑、当局の見解に整合性がない)
- 硬直的な雇用制度
- 医療サービス
- 外国人向け教育機関

不満な点の中では、輸送インフラの改善が大きな課題である。高速道路の延伸は一定の評価はあるものの、もっと「より早い」ペースでの整備を求める企業の声が大きい。都心で事業を行う非製造業の不満度が特に高い。ワルシャワや大都市では朝の通勤時と終業時の交通渋滞がかなり深刻である。鉄道インフラの改善も必要だ。製造業の企業に関して言えば、工場に通勤するスタッフ用の通勤バスを企業が手配しなくてはならないなど、コスト増の要因にもなっている。また、工場から離れた地域の人材や通勤手段を持たない若年層の雇用が困難と指摘する企業も多い。

インフラ整備が進むポーランドの高速道路網を示す。

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(Sources: File: NowaMapaStan.svg)    

<日系企業のM&A事例>
ポーランドにおける日系企業の進出は1995年頃から増えはじめた。日系企業進出の変遷にはあるトレンドがあるようで、1999年から2004年にかけては自動車関連企業の進出がブームとなった。2005年から2007年は薄型TV関連企業が多く進出した。そして、ここ近年はM&Aが増えている。

◇ ロッテホールディングスによるチョコレート会社Wedel社買収事例
日本でおなじみ「お口の恋人」ロッテが2010年6月29日に英キャドバリー傘下でポーランドチョコレートメーカー最大手Wedelの買収を発表した。買収は欧州連合(EU)規制当局の承認を得てなされた。9月には前株式を取得し100%子会社化している。同年2月にキャドバリーを買収した米食品大手クラフトフーズと全株式取得で合意したものである。Wedelのチョコレートはポーランド人にとっては小さいときから食べなれたブランドで、160年の歴史がある。買収額は非公表。Wedelの売上(2009年)は141億円、営業利益は20億円。買収方法は相対による株式買収。

Wedelの販路はポーランド国内に留まっているが、今後の成長が見込めるロシアや東欧地域の足がかりにしたい考えで、「欧州ではロッテグループを拡大するための中核」とし、両社の事業強化を欧州全体で図る方針である。ロッテはWedelの販路を活用して「コアラのマーチ」などロッテブランドの製品の現地販売も視野に入れている。

現在、アカウンティングとマーケティングを専門とする日本からの二人の専任者がワルシャワに詰めている。その一人は「ポーランド人は付加価値の高いものを評価する傾向があり、3800万人の人口が減少傾向にあってもそういった人口層が増えることで逆に一人当たりのマーケットは拡大する」との見方を示している。

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ワルシャワ・ロッテ                         Wedelが誇るチョコレート職人

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すべてチョコレートでつくられている。ロッテ内に展示スペースがあり見学も可能。

◇ キャノンによるベンチャー医療メーカーのOptopol社買収事例
Optopol社は網膜の断層検査を行うOCT(Optical Coherence Tomography)等の眼眼科機器の開発、製造、販売を幅広く展開する企業。2009年12月、キャノンは総合眼科診断機器分野で世界ナンバーワンの実現にむけたパートナーとして、Optopol社をグループに迎え入れた。今回の買収額は248百万ズロチ(約79億円)で買収方法は公開買付(TOB)による株式取得である。

この買収によって、3つの大きな効果が期待される。
(1) OCT分野への参入
(2) 製品面での強力な補完関係
(3) 技術面でのシナジー効果
市場を通じた株式の公開買付けにより、Optopol社の発行済株式総数の90%の取得を図り、総合眼科診断機器で世界ナンバーワンの実現を目指している。

キャノンは10%ほどに留まる眼科診断機器市場の世界シェアの2015年には25%に引き上げる狙いだ。キャノンは2次元で眼底を撮影する眼底カメラや眼圧計などに強い。Optopol社とは製品面で重複がなく、相互補完できる。OCTは近赤外線を使った眼底検査装置で緑内障や加齢性黄斑変性などの網膜疾患の診断で用いる。

◇ 明治安田生命とタランクス社によるポーランド保険会社の共同買収
日本の保険会社としてはポーランドで初の事業展開である。明治安田生命とTalanx AG(独)は、ポーランドの生保第2位のEuropa Group(本社 ポーランド・ヴロツワフ)の共同買収について、オイロパ社の親会社であるGetin Holding S.A.(本社 ポーランド・ワルシャワ)と合意し、ワルシャワ証券取引所における市場公開買付を開始。2010 年11 月に、資本および業務提携からなる戦略的提携契約を締結し、両社によるグローバルな共同保険事業展開の第一弾となった。明治安田生命は今回の共同買収により、日本の保険会社としては初めてポーランドで事業展開を行なうこととなった。

オイロパ社は、生命保険事業および損害保険事業を展開する大手保険グループで、現在、多数の金融機関等と提携し、強固な事業基盤を有している。オイロパ社の親会社であるゲティン社は、傘下に保険会社のほか複数の銀行、証券会社等を保有するポーランド有数の金融グループで、今回の取引完了後も、引き続き傘下の銀行等を経由してオイロパ社の保険商品を販売していく予定。
オイロパ社がワルシャワ証券取引所に上場しているため、明治安田生命とタランクス社は同社のすべての株主を対象に市場公開買付を開始。

ワルタ社(ポーランドの保険会社)の株式取得に関して
その後、明治安田生命は、Talanx AGの子会社であるTalanx International AGから、2012年7月、ポーランドの大手保険グループWarta Group(本社 ポーランド・ワルシャワ)の株式を30%取得。このワルタ社株式の取得は、ポーランドのEuropa Groupの共同買収に続き両社がめざすグローバルな共同保険事業展開の第二弾となった。

ワルタ社は1920年に設立され、ポーランドにおいて生命保険および損害保険の両事業を展開している大手保険グループ(生保3位・損保3位・合計2位)で、ポーランド全土にわたる代理店網など幅広い販売チャネルをもつとともに、高いブランド力と強固な事業基盤を有している。
明治安田生命は、ワルタ社および金融機関窓口販売を強みとしているオイロパ社のそれぞれの特色を活かした経営をタランクス社、ティント社とともに推進し、ポーランドで全体としては第2位となる保険グループの発展を目指す。

(以上)